第17回 ウォーターワークコンペティション
2014 ウォーター・ワーク・コンペティション at Lake NOJIRI
第 17 回 水難救助犬 競技会 大会報告
第 9 回 水難救助犬認定(内水面・湖沼)審査会 結果報告
ウォーターワークコンペティション運営本部長 妙高動物病院 星 博夫
今年も天候に恵まれ、みなさんは愛犬とともに大自然を楽しみながら奮闘されていました。
「第 17 回水難救助犬競技会」(The 17th Annual Water Work Competition at LAKE NOJIRI)と
「第 9 回水難救助犬認定(内水面・湖沼)審査会」(9th Annual Water Rescue Dog Certification Examination)が、
主催:(一般社団法人)日本ウォーターワーク協会(J.W.W.A)(会長 千葉 路子)、
協賛:DOG・DEPT、A・Dサマーズ、妙高動物病院、フレンドリー、HAPPY DOG
協力:JWWA 大阪(前村真由美)・西湖(大石みち子)・妙高(星博夫)の各支部によって、
長野県信濃町菅川「野尻湖」(標高 600m)・(上信越高原国立公園)を会場として開催されました。
ちなみに気温18℃、水温は 21℃でした。
はじめに、千葉会長より開会の挨拶、優勝カップの返還、ミーティング、各自、自己責任で競技に臨むよう、
星競技リーダーの発声で、午前10時からオープンクラスの競技開始です。
当日の大会スケジュールは
時 間 内 容 場 所 備 考
9:00 各自、野尻湖へ集合 野尻湖 安全運転
9:30
10:00
受付・開会式
競技会(オープンクラス)
(エキスパートクラス)
野尻湖 審査員:JWWA ジャッジ
12:00 昼 食 「フレンドリー」
13:00 競技会(エキスパートクラス)・審査会 野尻湖 審査員:JWWA ジャッジ
15:00 講評、表彰式、記念写真、解散 気をつけてお帰り下さい
オープンクラスの競技は以下の順番で開始されます。
種目1は、シングル・レトリービング(単純な物品持来)(難易度 3、 満点30ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、ハンドラーは手に物品を持ち、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
競技リーダーの指示で、ハンドラーは 10m 沖に物品を投げます。
競技リーダーの指示で、ハンドラーは犬を沖に出します。
犬は物品に向って泳ぎ、優しく物品をくわえて保持し、岸にいるハンドラーに向って運搬します。
競技リーダーの指示でハンドラーは物品を渡すコマンドで犬から物品を受け取ります。
種目2は、サーチ・レトリービング(探索を伴う物品持来)(難易度 3、 満点30ポイント)
犬とハンドラーは水場に背を向け岸に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
競技リーダーが水中に浮く物品(ダンベル、救命胴衣、ボート用の座布団等)を岸から 15m 沖に浮かべます。
競技リーダーの指示で、ハンドラーと犬は水場に向って座りなおします。
競技リーダーの指示で、ハンドラーは犬を沖に出します。
犬は誰の助けも借りずに物品の位置を突き止め、物品に向って泳ぎ、優しく物品をくわえて保持し、岸にいる
ハンドラーに向って運搬します。
競技リーダーの指示でハンドラーは物品を渡すコマンドで犬から物品を受け取ります。
種目3は、ロープ・キャリング(ロープの運搬)(難易度 5、 満点50ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
岸の地面には 25mのロープが置かれています。
水場には 15m沖に溺者役のアシスタントがいます。
競技リーダーは「準備ができましたか」と聞き、その後「開始」の合図を出します。
ここで競技の開始となり同時にタイムの測定が始まります。
この時、ハンドラーが犬にロープを手渡すか、犬が直接地面からロープをくわえてもかまいません。
犬は1分以内にロープをくわえ、水場に出ていかなければなりません。
ハンドラーは岸で待機しており、ロープのもう片方の端を手にしています。
溺者役のアシスタントが犬の運んできたロープをつかんだ所で競技は終了です。
その後、溺者役のアシスタントと犬は岸まで一緒に泳ぎます。
ただし、そのロープを使って、溺者役のアシスタントを牽引することが出来れば、高い評価を得られます。
種目4は、テーク・ア・ボート・イン・トゥー(ボートの牽引)(難易度 4、 満点40ポイント)
犬とアシスタントは水場に向っています。
犬はヒールポジションでアシスタントの横に座っています。
ボートを漕ぐ人と共にハンドラーはボートに乗って 15m沖に出ています。
ボートには3mのロープがくくりつけられています。
競技リーダーはすべての準備を確認した後、「はじめてください」の合図を出します。
アシスタントはボートにいるハンドラーに向かって陸から犬を送りだします。
犬がボートまで泳いできたら、ハンドラーはロープの先端を犬にくわえさせます。
ハンドラーはコマンドを出し、犬にボートを陸まで牽引させます。
ボートが水底に触れたとき、または陸に上陸できる距離まで来た所で競技終了です。
ハンドラーは犬に1分以内にボートの牽引を開始させます。
種目5は、スイム・ウィズ・ハンドラー(ハンドラーとの遊泳)(難易度 4、 満点40ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
競技リーダーの指示で、犬はヒールポジションでハンドラーと一緒に水場に出て行き、そのまま水の中を進み、
泳げる深さに来たところで、水泳を開始します。
その後、さらに 10m 沖まで泳いで行きます。
10m の水泳の後、犬とハンドラーは岸へ方向転換し、犬はハンドラーのコマンドによってハンドラーの先を泳ぎ
ハンドラーを岸まで牽引します。この時ハンドラーは泳いではいけません。
犬の足が水底についたところで競技終了です。
種目 6 は、コンプリヘンシブ(全体の印象)(難易度 1、 満点10ポイント)
種目と種目の間に犬とハンドラーがどのような振る舞いをしたか、または犬がどれだけ協力的に、
あるいは積極的に集中して競技に参加したかを審査します。
以上の6種目で競技が進められました。
オープンクラスに参加するためには、過去2年以内に S&R(スイム・アンド・レスキュー)テストに合格していなけ
ればなりません。 得点は、200ポイント満点、オープンクラスの合格点は100ポイント、160ポイント以上で、
エキスパートクラスへの出場権が付与されます。
オープンクラス成績
順位 ポイント No ハンドラー名 愛犬名 犬 種 住所
1 161 O-1 宮原 浩信 マーリー ニューファンドランド、2010 年 6 月 27 日生 兵庫県
2 124 O-5 宮原 浩信 アロハ ニューファンドランド、2013 年 5 月 25 日生 兵庫県
3 122 O-2 三家 茂 ライデン ニューファンドランド、2009年4月2日生 東京都
4 117 O-3 鈴木 博子 ファルコ ラブラドール・R、2008 年 8 月 14 日生 兵庫県
5 74 O-4 小林 晃 Biku ラブラドール・R、2006 年 5 月 1 日生 新潟県
各チームは粛々と競技種目を遂行し、1チームが 160 ポイント以上を獲得し、エキスパートクラス進出です。
オープンクラス 5 チームが終了したところでランチタイムとなり、
レストラン「フレンドリー」でおいしいランチタイムです。
午後1時から、エキスパートクラスの競技開始です。
種目1 レイ・ダウン(グループでのフセてマテ)(難易度 2、 満点20ポイント)
競技リーダーがハンドラーと犬を位置につかせます。
各競技者との間隔は5mで、水場から5m離れています。
競技リーダーの指示により、ハンドラーは犬にコマンドあるいはハンドシグナルで犬にフセをさせ、待機します。
その後ハンドラーは犬をフセの状態で残し、競技リーダーの所へ集まります。最低3分間フセマテをしています。
競技リーダーがハンドラーに競技の仕方などを説明している間、犬はフセをして待っていなければなりません。
競技リーダーの指示により、ハンドラーは犬の所へ戻ります。
そこでコマンド「スワレ」を与えます。犬が座ったところで、この競技は終了です。
種目 2 レトリーブ・フロム・ブリッジ(桟橋からのレトリービング)(難易度 3、 満点30ポイント)
犬とハンドラーは桟橋にいます。この時、ハンドラーは木製のダンベルを手にして、
犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
水の深さは、犬が飛び込んだ時、水底に足がつかないほどの深さが必要です。
競技リーダーの指示により、ハンドラーは 10mほど沖に物品を投げます。
競技リーダーの指示によってハンドラーは犬を水に出し、レトリーブさせます。
犬は桟橋から飛び下り、物品をくわえ陸へ運搬します。
ハンドラーは犬が泳いでいる間に岸に戻り、犬を迎えます。
競技リーダーの指示でハンドラーは犬から物品をもらいます。
この時犬はヒールポジションでスワレの状態です。
種目3 ロープ・キャリング・アンド・プリング・ア・ボート(ロープの運搬とボートの牽引)
犬とハンドラーは水場に向っています。(難易度 3、 満点30ポイント)
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
ハンドラーは端に結び目のある、およそ3mのロープを持っています。
15m沖にはアシスタントとボートを漕ぐ人がボートに乗って待機しています。
競技リーダーの指示により、ハンドラーはコマンドで犬にロープをくわえさせ、ボートに乗っているアシスタントの
ところに運ばせます。
犬がボートまで泳ぎ着いたら、アシスタントはロープの端をボートにくくりつけるか、手で持っています。
その後、犬はロープをくわえたまま陸までボートを牽引します。
ボートが水底につくか、犬の足が水底につく所まできたら、競技は終了です。
種目 4 ディレクテッド・ライフライン・プリング(方向指示を伴う浮輪の運搬・牽引)
(難易度 5、 満点50ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
ロープの端に結び目のある、3mのロープでくくりつけられた浮輪があります。
2人の溺者役のアシスタントが 15m沖にいます。2人の間隔は 15mです。
競技リーダーはどちらの溺者を岸に連れてくるか、ハンドラーに指示を出します。
ハンドラーのコマンドで犬はすばやくロープをくわえ、指示された方へ泳いでいきます。
犬が溺者のところへ着いたら、溺者は浮輪をつかみ、陸まで牽引してもらいます。
浅瀬に着いたところで競技は終了です。
そこでハンドラーが犬と牽引された溺者を迎えます。
種目 5 アンダーウォーターレトリービング(水底からの物品持来)(難易度 3、 満点30ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
ハンドラーはアンダーウォーターレトリービング用の水に沈む物品を手にしています。
競技リーダーの指示でハンドラーと犬は一緒に水辺へ出て行きます。
犬の腹に水があたる程度の水深まで進んでください。そこで犬は立った状態で待っています。
ハンドラーは犬から1m先に物品を投げ、物品が沈んだら、コマンドで犬に探させます。
犬は水中に沈んだ物品を探しあて、ハンドラーの所へ持って行きます。
3分以内に3回のレトリービングを行うことができます。
ハンドラーの手に物品が渡ったところで競技終了です。
種目 6 ディレクション・レトリービング(方向指示を伴うレトリービング)(難易度 3、 満点30ポイント)
犬とハンドラーは水場に向っています。
この時、犬はヒールポジションでハンドラーの横に座っています。
15m沖に2つの同じ物品(パドル、救命胴衣、フロート等)が 15mの間隔で浮いています。
競技リーダーがどちらの物品を先に持ってくるか指示を出します。
競技リーダーの指示で、ハンドラーは犬を沖に出します。
犬は物品に向って泳ぎ、優しく物品をくわえて保持し、岸にいるハンドラーに向って運搬します。
競技リーダーの指示でハンドラーは物品を渡すコマンドで犬から物品を受け取ります。
残りの物品もレトリービングして競技は終了です。
種目 7 ライフセービング・フロム・ボート(ボートからの救命)(難易度 5、 満点50ポイント)
15m沖のボートに、犬・ハンドラー・溺者役のアシスタント・ボートを漕ぐ人が乗っています。
競技リーダーは、ハンドラーが位置についたら、溺者役が水の中へ入るよう、合図を出します。
溺者役はジャッジから見える場所に浮いています。
ハンドラーはコマンドで犬に水中へ飛び込むよう指示を出します。
犬は溺者役を見つけボートあるいはいちばん近くの陸まで牽引します。
牽引中は溺者役は泳いではいけません。
溺者役がボートについた時、あるいは犬の足がつく浅瀬まで牽引されたところで競技終了です。
以上の7種目で競技が行われました。
オープンクラスで160ポイント以上取得していないとエキスパートクラスには参加できません。
得点は、240ポイント満点、エキスパートクラスの合格点は130ポイント、190ポイント以上で認定です。
また、2年間で130ポイント以上取得できない場合は再度オープンクラスから競技しなければなりません。
エキスパートクラス成績
順位 ポイント No ハンドラー名 愛犬名 犬 種 住所
1 225 E-2 前村 真由美 ベリー ラブラドール・R、2005 年 6 月 8 日生 大阪府
2 211 E-1 大石 みち子 フォンス ゴールデン・R、2006 年 3 月20日生 静岡県
3 180 E-3 佐藤 元 アルム ゴールデン・R、2009 年 3 月 1 日生 大阪府
4 151 E-4 宮原 浩信 マーリー ニューファンドランド、2010 年 6 月 27 日生 兵庫県
今年のエキスパートクラスはオープンクラスから進級してきたチームもあり、微笑ましい内容となりました。
前村ベリーチームが 2 年連続の1位となりました、優勝おめでとうございます。
そして、全チームが終了し、15 分間の休憩後に第 9 回水難救助犬認定(内水面・湖沼)審査会が始まりました。
この審査会は、家庭犬として育てられた犬に、水難救助技術をハンドラーとともに習得してもらい、
非常時に、人命救助の一助になれば良いと考えています。
「ウォーターサーチ」や「災害救助犬」等との違いは出動要請があってから出動するのではなく、
偶然、目の前で溺者(本人・家族・友人・知人・他人)に遭遇した時、自己責任において判断し、救助することが
できれば良いと考えています。
そして、水難救助技術を習得することにより、犬および人の健康増進を図ると共に、社会に貢献することを
目的としています。
まず、服従試験から開始です。
最初の科目は全員で
種目1 レイ・ダウン(グループでのフセてマテ、5 分間以上)(難易度 2、 満点20ポイント)
次に各チーム毎に下記科目を実行してもらいます。
種目 2 レトリーブ・フロム・ブリッジ(桟橋からのレトリービング)(難易度 3、 満点 30 ポイント)
種目 3 アンダーウォーターレトリービング(水底からの物品持来)(難易度 2、 満点 20 ポイント)
種目 4 スイム&レスキュー(水泳と救助)(難易度 3、 満点 30 ポイント)
100 点満点中 80 点獲得で服従試験合格となります。
次に実技試験開始です。
はじめにライフセービング(人命救助)です。
溺者役のヘルパーを2名以上救助します。(遭難状況を想定したものです)
1 級は意識不明で水面に浮いている他人の溺者を色々な手段を使って救助します。(難易度 9、 満点 90 ポイント)
2 級は友人・知人を色々な手段を使って救助します。(難易度 6、 満点 60 ポイント)
3 級は本人・家族を色々な手段を使って救助します。(難易度 3、 満点 30 ポイント)
最後は口頭試験(難易度 1、 満点 10 ポイント)です。
実際の遭難現場を想定した質問が出され、それに対する対処法を答えます。
実技試験1級は 100 点、2級は 70 点、3級は 40 点満点で、各々80 パーセント以上の獲得で合格となります。
水難救助犬認定(内水面・湖沼)試験合格チーム
級 服従
実技
ハンドラー名 愛犬名 犬 種 住所
3 80
40
三家 茂 ライデン ニューファンドランド、2009年4月2日生 東京都
今年は 1 チームが、3 級に合格しました。(認定有効期間は 2 年)
1級合格チームは、過去2チームいましたが、高齢でリタイアしたりで、現在は3チームとなりました。
今後も引き続き、幅広く参加者を募らなければならないと思っています。
是非、皆さんも愛犬と一緒に参加してみて下さい。 必ず、新しい発見と感動に出会うでしょう。
そして、表彰式後に各入賞チームの撮影や野尻湖をバックにして全員で記念撮影をしました。
その後、来年の大会での再会を誓い、解散となりました。
大会会長・審査員 千葉 路子
競技リーダー・審査員 星 博夫
写真撮影 平岩 信之
溺者ヘルパー 佐藤瑠美、松田好永、他多くのみなさんの協力を頂きました。
写真提供 JWWA(一般社団法人 日本ウォーターワーク協会)